2003東京建築賞一戸建住宅部門奨励賞受賞 (2003.05)

<東京建築賞審査員講評>

 

それぞれ自分らしく、共に暮らすいえ


 高齢化社会や少子化で家族の有り方が新たに見直され、さらに介護の問題を加え、それらへの対応が社会問題となり新しい住まい方の提案を建築家は真剣に考えていかなければならない時代を迎えている。


 この住宅はそれらの問題に誠実に解答を与えようとしている意欲が感じられる。 下半身麻痺で車椅子生活を余儀なくされている夫人と独立した子ども夫婦を再び迎え入れて、2世代住宅としてそれぞれの生活を保ちつつ共に暮らす場である。

 車椅子の生活が全体の動線計画とディティールに大きな影響を与えていた。ホームエレベーターコアを中心に動線が処理され、全てフラットな床で玄関から導かれ、リビング階ではこのコアを廻って車椅子動線が一周できるようになっていて、リビング、キッチン、洗面、浴室、寝室が全て同一フロアーをめぐって完結出来るようになっている。


 又、コアを挟んで夫人寝室から浴室までがリビングから独立した動線によって確保され、外部からテラス越しに夫人寝室へ直接アプローチ出来るヘルパー動線が家族のプライバシーを妨げないように処理されている。

 最上階は若夫婦の生活領域でリビングの吹き抜けによって、全体の一体感とプライバシーの独立を両立させている。 車椅子生活のためのキッチンや手摺、浴槽の補助機器、ベットサイドの各種装置の一体化など、きめ細かく配慮され、かつ内装材に自然素材を用い不自由な夫人に対して家族全体が暖かく接している生活を実現した作品である。 (岡本 賢)