「住まいづくり」考 家族像の不確かな時代に 共著 2002萌文社刊より抜粋

町田市第7エリア高齢者在宅サービスセンター生活改善支援部会の活動概要

 

「住まいづくり」考 

家族像の不確かな時代に

共著 2002萌文社刊


 私が住んでいる町は都心から30キロ程の郊外住宅地です。昭和の初めには1軒の蝮取り一家しか住んでいなかったという緑深い丘陵地です。そんな何もない丘陵地に全人教育を目指した学校とその建学の精神に賛同した人たちとが一緒になって学園町を造ってきたという歴史があるためか、いまでも自治意識の高い、活動的な住人の多い町です。


  町も住民も若かった頃は、町づくりの課題は、建物や道路が次々出来、町がどんどん開発されていくという居住環境の変化と子供の成育環境についてが主でしたが、近年では市内で1、2を争う高齢者率でもあり、高齢になっても生活しやすい環境をどう整えるかが大きな課題になってきました。


  起伏の多い土地で、急な坂道や階段でアプローチする家も多く、足腰の弱った人には日々の買い物も大変です。特に雨や雪の日などは転倒の危険もあり、お年寄りは家に籠りがちになってしまいます。家に籠ると生き甲斐が限られ、通常より早期に介護や支援が必要にもなりかねません。自治型福祉(老いても安心して暮らせる地域づくりを地域自身で考え、人の輪を育て、自由で自主的な社会貢献活動を通して魅力ある町づくりをめざす)の拠点として高齢者支援センターの建設の必要が言われるようになりました。


  デイケア、ヘルパー派遣、配食などの一般的な介護支援サービスに加えて、送迎用ミ二バスサービス、支え支えられる生き甲斐支援の場としてメニューなど、自分たちの住む地域の実情や特徴に合ったサービス、メニューが提供できる、支援センターの建設、運営です。


  そこで、市によってこの地域に予定されることになった高齢者在宅支援センター建設の基本構想段階から、これを受ける住民団体として「建設促進住民の会」を結成し、住民達で施設の使い方について夢や理想や現実を話し合い、討議を重ねて行きました。コンペで設計事務所が決まると意向を共通 認識化できるように、受託した設計事務所と市の担当者、センターの運営予定有志、専門知識をもつ住民などが参加した「基本計画研究部会」ができました。また、施設建設と並行して他にも、運営研究部会、NPO法人化研究部会など、それぞれが得意分野の知識と情報を出し合って自主運営に向けての勉強を重ね、ついにNPO法人として施設オープンに漕ぎ着けました。オープン当初に介護保険制度の導入が決定され、課題山積みのままの船出でしたが、センターは関係者の熱意と努力で順調に運営されてきています。


  在宅介護は地域の支えがないと成り立ちません。そのためには、お互いに支え合えることができる地域社会であるべきです。(ちなみにセンターではケアする側のスタッフ、運営理事達の中には70代もまれではありません。)運営は住民参加を原則として、多くの住民がケアし、ケアされることができるように有償、無償、時間貯蓄、地域通 貨など臨機応変な参加の仕方に対応できるよう模索しながら、専門スタッフと一緒に運営しています。


  営利目的ではないNPO法人の為、町内会や地元商店などとも協力して、収益は介護保険対象外の日常生活支援や住宅改造、情報通 信手段の促進、エリア毎のおしゃべり会(ミニデイ)や文化イベントの実施等、地域の拠点、地域の交流の場として、自主事業の充実にあてていけるよう、各部会を立ち上げてがんばっています。また、災害時にはケアを受けながら避難できるようにもとセンターには備蓄倉庫も用意されています。


  センターの活動と連動して、この地域ならではのサービスを始めるお店も出てきました。出張歯医者や出張床屋、美容院、そしてスーパーや八百屋の電話注文による宅配サービスや買い物代行サービスです。急な坂や階段の多いこの町ではお年寄りに本当に喜ばれているそうです。お店の方も商売させてもらって感謝されてと、地域のお年寄りに目を向けたサービスや商店街づくりが根づきつつあります。重たい荷物は宅配で。商店街へはおしゃれして散歩がてら、お茶とショッピングを楽しみに。そんなセンスとゆとりのある町への変身を関係者達は願っています。


  年を取ったからこそ、地域に目を向け、過去の肩書きなど葬り去って、お互いに支え合う。年齢に関係なく、自立と自律、自己決定を大切にしながら前向きに尊厳を持って生きられるような人間関係と仕組みをつくる・・・。また、支える家族は年老いた親とどう向き合い、介護をどう乗り越えるか、離れて暮らす子はどうしたらいいか、そして今の子供達に生きること、死ぬ ことをどう伝え、植え付けていくか・・・、こういった世代間の問題にも踏み込んで地域を考えていかなければと思います。


  高齢化がさらに進むこれから、私たちはどのように歳を取っていけばよいのか、またいけるのか。年老いていく親の姿は次代を考える貴重な存在として、介護、医療、住宅、交通 、伝達、家族、仕事、あらゆる分野で高齢化を見据えた新しい地域の在り方を探っていく必要を感じます。


  とにかく、大切なのはそれぞれができることを持寄り協力しあって、確実に活動、実行に移していくこと、し続けること・・・です。 課題は尽きませんが、関係者達は今迄の活動、実績に誇りを持って地道に活動しています。    (木村真理子)